2005年 06月 23日
今年も夏がやって来た。
地球温暖化が進行しているせいで、今年の夏もとびきり暑い。 「まるでフライパンの上、いやフライパン山にいるようです!」 そうやって、暑さを異常気象と騒ぎ立てるレポーター。彼らはいまだに気付いていないのだ。もはやそれが異常では無くなっている事に。 夏の街は薄着の人々で溢れている。 特に若い女性の服などは、ただの布きれとの線引きすら曖昧な状態で、見る側としても嬉しいと言うより恥ずかしいと言う気持ちが先立ってしまう。 気温の上昇に比例して、肌の露出も増えていく。もしかしたらそれは自然な流れなのかも知れないが、僕はその流れに乗るつもりは無かった。 そう。僕はまだ、この猛暑の中一人スーツに身を包んでいたのだ。 もちろんこれは僕にとって意味のある事だ。 僕にとってスーツとは会社の一員としてのけじめ。企業戦士としての誇り。 僕はスーツを身にまとう事で、ただの名も無い端役から、サラリーマンと言う名のヒーローになる事が出来るのだ。 そんな自分を疑問に持った事なんて一度も無かった。 少なくとも、今年の夏までは。 今年の夏。僕は少しずつ自分のやっている事の意味を考え始めていた。 頭の中で二人の自分が言葉をぶつけ合う。 「こんな事、毎年毎年続ける意味が果たしてあるのか?」 「もちろんだ!今止めてどうする?少し楽になった代償に、大きなものを失う事になるんだぞ」 「そうだろうか…」 「そうさ。一度決めた事も貫けない男は何をやったってダメなんだ」 「…じゃあ、地球はどうなる?」 「うっ」 「僕らがスーツを着続け、ネクタイを締め続ける事がクーラーの設定温度を下げ、結局は地球の首を締めてしまっているんじゃないか?」 「…」 「そうだ!僕らの地球が危機にさらされている時に、自分の事だけを考えていてはいけないんだ!こんな…こんな首輪はもういらない!!」 僕はネクタイを投げ捨て、その足で会社へと走り出した。 スーツを脱ぎ捨てた体は、とても軽くなった気がした。 どのくらいの間走っていたのだろう。気付けば会社のある場所まで辿りついていた。 僕は天まで届きそうな声でこう叫んだ。 「すいません!遅刻しました!!…あれ?」 しかしその場所に会社は無かった。 会社の代わりにそこに存在したのは、一面に広がる、海。 会社は、地球温暖化の影響で上昇した海面に飲み込まれてしまっていたのだ。 僕がネクタイを外すのが遅かったばっかりに…。 「…なんて事になったら部長だって困るでしょうが」 「ネクタイはいい。せめてパンツははいてくれ」
by taketoshinkai
| 2005-06-23 22:13
| うそ日記
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