2004年 11月 13日
久しぶりにいい映画を見た。
僕はもともと映画なんてほとんど見ないし、映画監督の名前なんか一人も言えない。 でもこれはいい映画だった。それは自信を持って言える。 その映画の舞台は戦時下の東京。喜劇に命を捧げる劇作家と、笑いを憎む検閲官との攻防を描いたシチュエーションコメディ。笑いあり、涙ありの120分間は僕にとって至福の時であった。 だが、そんな事なんて全部吹っ飛ぶ程の出来事が起こった。 それは、エンディングロールが流れて「ああ楽しかったな」と席を立とうとした時。僕は目を疑った。 その素晴らしい映画の脚本家の名は、紛れも無く僕の昔の友人のそれだったからだ。 三谷!! すげーよお前。いつか映画の監督になりたいって言ってた三谷が、知らない間にこんなに大きくなってるなんてな。僕は涙が止まらなかった。これだけの事をやってのけた三谷を思って。そして、まだ何も出来ていない自分を思って。 彼は仲間内ではいわゆる「お豆さん」というポジションだった。いじめられっ子とまではいかないが、彼に敬意を払うものは誰もいない。 彼自信も(三谷のくせに)妙にプライドの高いところがあり、それがまた僕らの鼻についた。また、「僕は映画を作るんだ」と公言してはばからない彼の青臭さも気に入らなかった。でも今からして思えば、それは夢を持っている奴への嫉妬だったのかも知れないなあ。 僕らはある日、「そんなに言うなら書いてみろよ」と、彼に映画の台本の提出を求めた。彼をギャフンと言わせたかったのだ。 彼は台本一晩で書いてきた。僕らは驚いた。結構面白かったのだ。お豆さんの三谷に、こんなものが書けるなんて…!でも僕らはそんな事おくびにも出さずにこう言った。 「ダメ。全然面白く無い」 三谷はくじけなかった。毎日台本を直してきたのだ。僕らは毎日ダメ出しをした。でも何故か、三谷はうれしそうだった。 あれ?これって、この映画と同じシチュエーションなんじゃない?じゃあ俺の役はあの、カンヌでパルムドールを取った役者がやってる検閲官か。すげえ。でも、三谷の役を人気アイドルがやってるってのは気に入らないな。まあ、あきらめないとこは似てるって言えば似てるけど。 そうだ、三谷には才能があった。そして彼の才能とは「決してあきらめない事」であったのだ。 三谷、ほんとにお前夢つかんだんだな。正直羨ましいよ。でも待ってろ。俺がもっとでかくなったら、お前に胸張って会いに行くからさ。 その時だった。つけっぱなしにしていたテレビで、その映画の特番(再放送)が始まった。脚本家のあいさつもあると言う。こんなかたちで三谷を見る事になるとはなあ。僕は苦笑して、一人ごとをつぶやく。…あいさつが始まった! しかしそこに写っていたのは、僕の知ってる三谷とは似ても似つかない小太りの中年だった(なんか有名な人だったらしい)。 三谷。お前どこ行っちゃったんだよ。
by taketoshinkai
| 2004-11-13 15:17
| うそ日記
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