2004年 10月 30日
僕の友達に、谷君というのがいる。
彼は口数は多くないけれど、僕ととても気があった。 彼は博学で、特に女性の生態については休み時間に彼の机の前に行列が出来る程 詳しかった。 そんな彼についたあだ名は、「ムッツリーニ」。 高校3年生、そんなムッツリーニも恋をした。 僕らにはお世辞にもかわいいとは思えなかったが、彼が言うには「運命の人」ら しい。 その背の低い彼女は柔道をしていた。そして滅茶苦茶強かった。 その恋はその後、どうなったんだっけ? 僕らは別々の大学に入った。僕がこっちで一人暮らしを始めた事もあって、彼と 会う数も次第に減っていった。 彼と会わなくなってから何年かが過ぎたある日、彼の母親から電話がかかってきた。 どうやら彼は今、刑務所にいるらしい。元気が無いから会いに行ってやって欲しいとの事だ。 言わなかったが、彼には悪癖があった。 彼は手癖が悪かった。高価なものでも安いものでも関係無く、盗めそうだと思えば盗む。彼自身も、やめれるものならやめたいと言っていた。そしてその後に「無理だろうな。手が勝手にするんだから」と付け加えた。 そうか、まだ克服出来て無かったんだな。 僕は彼に会いに行った。 久し振りに会った彼は、年齢よりも老けて見えた。 「久し振りだな」 「ああ」 会話が続かない。僕は少し苛ついてこう言った。 「お前とはこんな所で会いたく無かったよ。何で、何でこんな事するんだよ!?」 彼は言った。 「谷だけに、バレーないかと思いました」
by taketoshinkai
| 2004-10-30 00:24
| うそ日記
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